そんな目で虎ちゃんに見られたくない。
思わず逃げ出したい気持ちに駆られる。
でも、だけどーー。
「心配なんだよ……」
虎ちゃんを突き離したのは私の方。
それなのに、今さらそんなのムシがよすぎるかな。
私の都合で勝手に話しかけちゃうなんて。
「つーか、振った相手のことなんか気にしなくていいし」
「……っ」
そう言われて、返す言葉が見つからない。
虎ちゃんの言うことは正論すぎて、まったくもってその通り。
どうすればいいのかわからない。
「友達でいるのもムリって拒否ったくせに、心配なんかしてんじゃねーよ」
「……っ」
ホントにその通りだ。
中途半端に虎ちゃんに話しかけちゃった。
……最低だ。
言い返せなくなって、思わずうつむく。
気まずい空気がそこに流れた。
重苦しい沈黙。
こんな空気は初めて。
「……ごめん。俺、すっげえ嫌な言い方した。最近、部活で思うようにプレイができなくて……イライラして。つい、咲彩に当たった」
「…………」
「ごめん。頼むから、これ以上気持ちを掻き乱すようなことはしないでほしい。咲彩が心配しなくても、俺は大丈夫だから」
「…………」
切なげな声でそう言われてしまい、それ以上何も言えなかった。
胸が苦しくて、切ない。
「頼むから俺のことはほっといて。じゃあな」
いつもは一緒に帰ろうって待ってくれていた虎ちゃんが、私に背を向けて遠ざかって行く。