早く俺を、好きになれ。



換気のために開けている体育館の中のドアから外に出て、辺りを見回す。


体育館のちょうど横に位置するのは、あまり人が通らない中庭だ。


校舎の中はものすごく賑わってたから、ここだけシーンとしていて何だか新鮮。



「……が好きなのっ!やっぱり諦められないの!だから、あたしと付き合って下さい!」



生温い風に乗って聞こえてきた女子の声に、思わず足が止まった。


角を曲がった先に伸びるふたつの影に、これ以上進んじゃいけないと本能が告げている。


邪魔しちゃ……悪いよね。


そう思って踵を返そうとするとーー。



「ごめん。何度も言ってるように、俺には好きな奴がいるから」



虎ちゃんの声が聞こえた。



「うん、知ってるよ……でも、好きなの。諦められないの!その子とは付き合ってないんでしょ?だったら、お試しで付き合うだけでも……」


「ごめん……。前から何度も言ってるように、俺は本気で好きになった奴としか付き合わないって決めてるから」


「で、でも、その子とはうまくいきそうにないんだよね?だったら……」


「それでも……簡単に諦められないんだよ」


「あ、あたしだって……!ずっと末永君を見てきた。簡単に諦められないのは同じだよ」


「だったら、俺の気持ちがわかるよな?マジでごめん。わかって」


「……っ」



虎ちゃんの切羽詰まったような声に、胸が締め付けられた。


優しい笑顔の裏に、切ない本音が隠れていたなんて。


どれだけ虎ちゃんを傷付けてしまっていたんだろう。


ホントにバカだ。


虎ちゃんの気持ちを全然わかってなかった。