「ごめんね、代わるよ!」
はぁはぁと息を切らす私を見て、武富君が苦笑する。
「そんなに急いで戻って来なくてもよかったのに。市口さんって、どこまでもお人好しだよな」
クスクス笑う武富君。
その笑顔に胸が熱くなる。
「だって……悪いし」
これ以上武富君に迷惑はかけられないもん。
それに誰かと回る約束をしてたかもしれないと思うと、どうしても駆け足になっちゃったんだ。
「織田さんと……約束があったんじゃないの?」
知りたいけど、知りたくない。
でも……知りたい。
傷付くってわかってても、知りたい。
武富君は今、心から笑えているのか。
幸せなのか。
「いや、柑菜とは約束してないよ。あいつも、今はクラスの店番してるらしいし」
「……そっか」
そういえばさっき、織田さんはそんなことを言ってたっけ。
どことなく寂しそうな武富君の横顔に胸が締め付けられる。
「あっれー?武富も受付してんの?まだ早くね?」
偶然教室の前を通りかかった斎藤君が、並んで座る私たちを見て目を丸くする。
そういえば、斎藤君も今はフリータイムなんだっけ。
無邪気にりんご飴を舐めてる姿は子どもみたいだ。
っていうか、舐めながら歩くのはやめようよ。
「市口さんが1人で大変そうだったから手伝ってる」
「へえ。旦那が怒ってもしんないぞ」
「だ、旦那!?」
シレッと口にした斎藤君は、なぜか私の顔を見ながらわざとらしくウインクをしてくる。



