綺麗な満月を見てしばし無言になる。
わかってる。
ううん、わかってた。
この恋が叶うことはなくて、武富君が私に振り向いてくれることはありえないってこと。
だってさ、小説の主人公は何があろうとヒロインの女の子を諦められなかったから。
武富君、自分は主人公と同じだって言ってたよね……?
だったら結末は見えてるじゃん。
諦めなかったら最後にはきっと笑えるはずだから。
私はヒロインじゃなくて、一方的に片想いをする報われない女の子。
武富君がハッピーエンドを迎える過程の中で、ただ通り過ぎて行くだけの存在。
それがわかってしまった。
「虎ちゃん……」
「んー?」
「私、アイになりきるね」
「アイ?誰だよ、それ」
隣で虎ちゃんがクスッと笑った。
「小説の中の登場人物」
「へえ」
「ヒロインじゃなくて、脇役だけど」
主人公のことを一途に想ってツラい恋をしていたアイ。
だけどその恋が報われることはなかった。
でもアイは自分の気持ちに正直で、ツラくても主人公の恋を応援してた。
だから私も頑張ってみるね。



