「でも、2人はすれ違ってるだけで話せば誤解だってわかるんだよ?」



それなのに、こんなのってないよ。


ツラすぎる。


好き同士なのに、武富君がかわいそうだ。



「バカね。誤解させとけばいいんだよ。誤解を解こうとしない2人に問題があるわけだし。好きなんでしょ?そうでもしなきゃ、武富君は手に入れられないよ?付き合いたいんでしょ?」



「好き……だけど。付き合いたいかって聞かれたら、どうだろ」



頭にチラつく武富君の顔。


武富君には笑ってて欲しい。


だけどね、それは私の隣でって意味じゃない。


武富君が安心出来て、心から一緒にいたいと思う人の隣で笑ってて欲しいんだ。


それは私じゃなくて織田さんだってわかってるから。


だから苦しいのかな。



「じゃあ付き合わなくていいの?咲彩の場合は元が無謀な恋なんだから、このチャンスを狙って駆け引きしなきゃムリだよ」



「そう、だけど。でも、なんか違うんだよ」



付き合いたいとか付き合いたくないとか。


駆け引きとか。


そんな問題じゃないっていうか。


話せば分かり合えるのに、逃げてる織田さんにモヤモヤするし。


織田さんの本音を知ろうとしなかった、深く踏み込もうとしなかった武富君にも疑問を感じる。


好きならとことんぶつかればいいのに。


武富君も、潮時だったって……諦めが入ってたし。


好きなのに、簡単に手放せるもの?



あー、もう!


私だって、そりゃ好きだよ?


1年も片想いして来たんだもん。


付き合えたらって……夢見て来たけど。



でもね2人がすれ違ったままでいるのは、私の中でスッキリしないんだ。



「まぁいいわ。咲彩の思うようにやってみなよ!あたしは応援してるから」



「うん……ごめんね。ありがとう」



私はきっと、蘭に背中を押して欲しかった。