「今日部活休みだから、一緒に帰る?」



「え?」



少し遠慮がちな虎ちゃんの声に戸惑う。


そんな捨てられた子犬のような目を向けて来ないでよ。


断れないじゃん。



「ちょっと用事を思い出しちゃって、今から引き返すところなんだ。待ってて……くれる?」



「ん、ここで待ってる」



私からスマホを受け取った虎ちゃんは、ズボンのポケットにそれをしまいながらはにかんだ。


サッと行って早く戻って来よう。


武富君はまだ教室に残ってるはずだから。



だけどーー。


教室には武富君の姿は見当たらなかった。



いつも武富君と一緒にいる男友達が残っていたので、勇気を振り絞って聞いてみた。



「図書室に行くって言ってたから、そこにいると思う」



「図書室?そっか、ありがとう」



お礼を言って慌てて図書室へ向かった。


図書室までは距離があって、虎ちゃんを待たせていることを思うと自然と足が速くなる。