我慢する理由がなくなって、ジワジワと涙が溢れた。
ダメだよ、ガマンしなきゃ。
さっき、ガマンできるって思ったじゃん。
すぐに虎ちゃんが来るかもしれないんだから。
「ふっ……う。ひっく」
気付くと涙が頬に流れていた。
こんな姿を誰にも見られたくなくて、ひと気のない場所を探す。
歩いていると校舎の裏側にある中庭のベンチにたどり着き、そこに座った。
頬に流れた涙を手で拭う。
辺りには静寂が漂っていた。
「市口さん?」
どれくらい経ってからだろう。
不意に名前を呼ばれて息が止まりそうになった。
振り返らなくてもその声が誰なのかがわかって、胸が締め付けられる。
……苦しい。
唇を噛み締めた。
とっさに涙を拭って顔の筋肉に力を入れる。
ーーズキズキ
ーーヒリヒリ
大好きな人の声なのに。
胸が……痛い。
振り返ることが出来なくて、どうすればいいのかわからない。
お願いだから、こっちに来ないで。
私のことはスルーして。
「あ、やっぱり市口さんだ」
私の願いは届くことなく、目の前に現れた制服姿の武富君。
武富君はいつものように目を細めて優しく笑っていた。
そしてーー。
その隣には織田さんがいた。



