鉄パイプを握り締め、倒れた青年の頭を踏み潰した。
脳漿が飛び散る。
ピンクのゼリーの様な脳が、頭蓋骨の白い破片と混じっている。
鮮血が地を這い、靴底に血液が付着する。


「逃げたらダメだよ。鬼ごっこは面倒だから。」


最早、青年達は声も出ないようだ。

肩を叩いた青年の頭を、右手で掴み上げて握り潰す。
手袋が台無しだ。後で燃やそう。
近くに居たスキンヘッドの青年は鉄パイプで薙ぎ倒して、鉄パイプを振り上げてとどめを刺す。
其の奥に居る青年は回し蹴りで、壁に叩きつける。
普通なら有り得ないが、青年は車に轢かれた蛙のようにぺちゃんこになってしまった。


「アハハハ!!脆いねぇ〜」

「うぉぉぁぁあああおおあああッ!!!!」


最後の1人が発狂して、ボクに殴りかかってきた。
1歩引き、左手に握られている鉄パイプを地面と平行に持ち、後方から前方へと突き出した。

肉を貫く音と貫いた感触が伝わる。
青年の口から血が垂れる。
血がコートに付かないように、すぐに離れる。
幸い服には付着しなかったが、靴が被害を受けた。
茶の革靴なので目立つ。
取り敢えず靴の事は後で済ませるとして、ボクは男の子の元へ向かった。

目を閉じて、耳を塞ぎ、歌を歌っている。
小さくなってうずくまっている其の子を、赤子のように抱き抱える。
体がビクッと反応した。突然触ったからからな。

そのまま更に路地の奥へ足を進めた。
今、表通りに出るのは馬鹿の所業だ。自分から調整局へ足を運ぶようなものだ。
男の子はいまだ仔犬のように震えている。


「もう、大丈夫だよ。」


男の子の右耳を塞いでいる右手をどけてそう囁いた。
男の子はゆっくりと瞼を開けた。


「やぁ!もう怖くないよ!...泣かないで」

「な、泣いてない!オレは強い男になるんだからな!!」


面白い子だな。嫌いじゃないよ。


「へぇ〜将来が楽しみだ。
...ところで、どーしてあんな奴等に絡まれてたの?」

「兄貴の事、馬鹿にされたから...」


男の子は視線を自身の手に落としながら言った。


「兄貴って“セルリア”の事?」

「何で知ってんだよ!?」

「だって大声で言ってたから。セルリアが兄貴って想像出来ないけど...。
まぁ、年下には弱いしね。」

「兄貴の事知ってんの!?」


予想以上に食いついてきた。
へぇ、あのセルリアがねぇ...。こんなか弱い少年と関係があっただなんて、良い事知ったなぁ。


「知ってるよ。“たくさんね。”」

「兄貴すっげぇ強いんだぜ!!相手をどんどん倒していくんだ!!!」


男の子は顔を上げ、自慢気に話す。相当仲が良いのかな?
話からして如何やらセルリアが殺人鬼だという事は知らないようだ。
其の方が幸せだ。確実にね。


「随分好きなんだね。君、名前は?」

「オレ、シャタム!!」

「ボクはドール・ラーベスト。好きに呼んでいいよ。」


ボクは笑顔で自己紹介を済ませて、セルリアのアトリエに急いだ。