第2巻 Sicario〜哀しみに囚われた殺人鬼達〜



セルリアにあの男の子の様な知合いが居たのか。
まぁ、其れも驚いたが...如何してセルリアを庇うような事を言ったのだろう。

色々と疑問に思う事が多々あるが、気付けばボクの体は男の子の元へ走っていた。

馬鹿みたいな事をしている自覚はある。
お人好しみたいな行為という事も重々承知している。
言い訳がしたい...。
だけど、動いてしまったからには相応の対応をしなくては。

ボクは笑顔で、1番外側に居るワックスで髪を上げ固めているピアスを顔に疎らに施している青年の肩を叩いた。


「あ゙?んだよ。テメェ!」

「オレ達に何か用ッスか?」


側に居たスキンヘッドの青年も挑発の言葉を投げかけてきた。
別に、其れ位では怒らないよ。


「ねぇ、ちょっとやり過ぎじゃない?」

「はぁ?説教ズラしてんじゃねぇーぞ!!いきなり何だよ!?コイツの知り合いか!!?」

「知り合いだろうが、そうでなかろうが...どうでもいいでしょ。
知っても君等が得する事じゃないし。」

「面倒臭ぇ野郎だなッ!!!」


鼻と唇にピアスをしている青年が、持っていた鉄パイプを振り上げてきた。
左手で受け止める。

ボクは怪力と言う能力もあるが、ほんの少し頑丈に出来ている。
頑丈なのは生まれ付き、だから人を超えるものではない。
関節を逆に曲げれば骨は折れるし、刃物で切りつければ皮膚は切れる。
強いて言うのなら、『打撲に強い』と言うだけ。

青年達が戦く。
降り上げた渾身の鉄パイプを、笑顔で、片手で受け止めたのだ。
仕方が無いだろう。


「如何したの?」

「な、なんだ...コイツ、」

「ば、化け物」

「なにビビってやがんだ!!こんなヤツとっととぶち殺しちまえッ!!!」


全員が戦闘態勢に入る。
皆、喧嘩慣れしている事が伺える。
でもそんな事関係無い。
だってボクは殺し屋なんだから。


「良いの?」

「あ゙ぁ゙?」

「君等は喧嘩慣れしているし、そこそこの自信がある事が伺えるけど...」

「今更命乞いなんて受け付けねぇーからな!!」


阿呆だ...。
虫唾が走る。
一度瞳を閉じて、ゆっくりと金色の瞳を開ける。
同時に禍々しい殺気を放つ。


「...貴様等に乞う命など持ち合わせて無い。
寧ろ乞うべきは貴様等の命だろう。」


相も変わらず、ボクは笑顔だ。


「死に様くらいは選ばせてやる。言え。」


青年達は固まったままだ。
小刻みに震えているのが見える。


「解った。じゃ、ボクが好きな殺り方で構わないね。
......“潰す”ね。」


受け止めていた鉄パイプを握り、鼻と唇にピアスをしている青年の頭を殴打する。
やけに鈍い音と青年の倒れる音が聞こえる。
男の子が怯えた顔でボクを見ている。


「目を閉じて、耳を塞いで、歌を歌ってて」


微笑みながら言うと、男の子は言われた通り、目を閉じ、耳を塞ぎ、歌を歌い始めた。


「意外と上手いね。」


もう、通行人の目はこちらに向いていない。
この国は関心が薄い。自分以外には。

だから叫び声がしても、“良い人”が、いない限り大丈夫だろう。
貴族街や治安の良い一般街ならまだしも、此処は貧困街や貧民街に近い一般街なのだから。

人は自身が愛しくて堪らないのだ。