少なくともボクの意思では起こさない。
面倒事は避けるタイプだから、意外と言われる事が多い。
失礼だよね。
「父さんもラーベストさんも五月蝿い。
はぁ、私どれ位気絶してた?」
気絶していたキャタナインが目を覚ました。
まだボクの首に腕を回したままだ。
「さぁな。
キャシー、勝手にこんな化け物と会うんじゃねぇ。危ないだろ。」
キャタナインはボクの腕から飛び出し、父親であるボスに向かった。
「父さん!!化け物って取り消して!!!
ラーベストさん...長いわね!!
ドールさんは優しい人なの!!!そして魔法みたいに空を飛べるのよ!!!
酷い事言わないで!!
ドールさんも笑ってないで少しは怒ってよッ!!!」
突然激昂しだしたキャタナインに、ボクもボスも呆然とした。
キャタナインは其れだけで治まらず、ボスのネクタイを掴み、ボクを指で示した。
「謝って!!ドールさんに失礼よ!!」
さらっと、ボクをファーストネームで呼んでいる事は今は黙っておこう。
勢いに任せて殴られるのは勘弁したい。
威厳あるマフィアのボスは、怒りをぶつける娘にタジタジだ。
何とか宥めボクに向き直す。
「悪かったな。」
「別に気にしてませんよ。よく言われるから。」
この言葉にキャタナインは反応を示した。
「誰ッ!?誰がそんな事言ったの!!」
「え、えっ...!」
キャタナインはボクの襟首を掴み引き寄せる。
ボクは屈む体制になり、キャタナインとの顔の距離は数cmになった。
「そんな事言う人私が消してあげる!!」
「はぁ!?いやいや!!?何で!?何でそうなるの!!?
レオさん!!!」
ボスに声を投げ掛ける。
肉親に止めてもらう事が一番だ。
「...オレは知らん。」
無情な返答しか返ってこなかった。
「そんなぁ...」
キャタナインは如何して、ボクに執着するのだろう。
正直現状が解らない。
何故怒られている。何故問い詰められている。
誰かに強く執着された事の無いボクは、手立てが思い付かなかった。
「別に殺さなくても良いよ。
本当に気にしてないから...。」
「私が気にするの!!」
キャタナインの両肩に手を置いて、一旦距離を取る。
「はぁ、取り敢えず落ち着いて...
何でそんなに怒っているの?」
「だって...」
急にキャタナインが威勢をなくす。
思い当たったのかボスの顔が驚きを彩る。
ボクも流石に思い付く...。信じられない事だ。
「レオさん。絶対怒らないでよ。
これ約束。」
「おい待て!!」
ボスの言葉を聞かずに、ボクはキャタナインの肩から頬に手を移した。
其のままボクは...、
____キャタナインの唇を奪った。


