キャタナインを抱き抱えたまま数分飛び回っていたが...。
そろそろ返した方が良いよね。
傍から見てこの図は誘拐に見えなくない。
ボスの部下に見られたら...、想像するだけで悪寒が。
「ラーベストさん!!あっちに行って!」
「ぁ...はい...」
さん呼びは変わっていないが、当初の敬語は何処かへ行ってしまっている。
其の上この状況を楽しんでいる。
嗚呼、如何したものか...。兄さんの頼み事が。
前髪が目を掛かる。
何時もと違い、今日は完全に仕事OFFなので、前髪を上げておらず真ん中から分けているのだ。
其れに加え今は空を飛んでいるのだ。当然髪は乱れ目を掛かる。
最悪だ...。
兄さんと正反対な丸い瞳ではなく、兄さんと同じ、細い瞳で前を見据えた。
キャタナインを今一度抱き締め直す。
「...?如何したの?」
「キャタナイン...今から送り届けるから。
暫く黙っていた方が身の為だよ。」
「えっ...」
キャタナインの返事を聞く間もなく、ボクは次の落下地点で後ろへ跳躍し、空中バク転を決めた。
次いでに180度回転して進行方向を向く。
ボクが向かう所は1つだ。
早く向かおう。これ以上の空中散歩は無駄だ。
時間がある時に構おう。
キャタナインは猫みたいで面白いから。
あ、今度は猫じゃらしを買って遊びに行こう。
建物を次々に渡り飛ぶ。
スピードを上げているので、髪は後ろへ靡いている。
本当はもっとスピードを上げた方が気持ちが良いけど、キャタナインが持ちそうに無いので止めておく。
キャタナインはボクの胸に顔を埋め、静かにしている。
心無しかボクに回している腕に、力が篭っている気がする。
怖いのかな、まぁ良いかな。
死ぬ訳では無いし...。
「確か...、あそこだった、かな...」
強風で目を細めているので、視界がかなり狭いが、『ファスティマファミリー』のボスの家。
レオナルド・ファスティマはファミリーの本部とは別に家族が住む家を持っている。
家と言うより最早別荘に近いが...。
豪華な二階建てのテラス付き。
二階のベランダに繋がっている部屋は、ボスの部屋の筈だ。
幸運にもベランダの硝子張りの扉が空いている。
ボクは其の扉に向かって、思いっ切り飛び込んだ。
上空から落ちてきたので、ベランダにはひびが入ってしまった。
このベランダ、石造りだったのか。
銃のセーフティロックを外す音が聞こえた。
「誰だ...?大胆且つ予想だにしない潜入からして、凡そ予想は付くがな。」
「やぁ!レオさん!!久しぶり!
お届け物を持ってきたよ。」
ボスは部屋の奥で此方に銃を向けている。
レースのカーテンが風に煽られて、部屋の中はよく見えない。
だが、部屋にはボスの気配しか感じない。
「テメェの大好きな兄さんからのか?」
「いいや、貴方の宝物さ。」
何時もと違う低音に響く声で言うと、ボスは銃を下ろして此方に来てくれた。
ボクの腕の中に居る気絶したキャタナインを見ると険しい顔付きになった。
「オレの娘じゃねぇーか。拉致ったのか?」
「拉致ったなら戻さないよ。」
笑って冗談を言ったが、尚一層殺意の篭った視線を向けられた。
「冗談でも殺すぞ。」
「わぉ、親バカってコワーイ。」
本当に殺りかねないけどね。
一父親だが、巨大なマフィアのボスなのだ。
“殺す”の重みは一般人とは違う。
「テメェ等は“親殺し”だったな。
...解らんだろうよ。
親の気持ちってのは...、良いから返せ。何時まで抱いてんだ。撃ち殺すぞ。」
“親殺し”
知る人ぞ知るボク等兄弟の過去。
兄さんとボクは実の両親を殺した。
兄さんの意思で...。
詳細は語らないでおこう。ボクが語るより、兄さんが語った方が良い出来事だから。
ボクは別に両親の事など特に思っていない。ボクには兄さんさえ居れば、其れで構わない。
両親なんて兄さんとボクの製造機で充分だ。
ボクは笑って言葉を流す。
「すぐ殺すって言うんだから...。
て言うか、何でキャタナインはボクの事知ってたの?
レオさんボクの事言った?」
ボスは思い出したのか。苦い顔をした。
原因は貴方か...。
「あぁ、知りたいっつってたからな。
仕事仲間として...、おい、ちょっと待て...。
〝キャタナイン〟だと...呼び捨てしやがったな。」
ボスの指が銃の引き金に掛けられる。
焦って理由を話す。
「えっ、いや...違うよ!!
彼女がボクに言ったんだよ!!!
名前で呼んでって!!」
「変な気起こしたら、テメェだけで済むと思うな。」
後半の言葉に反応する。
ボクだけなら如何なろうと構わないが、他を巻き込むのなら話は別だ。
特に兄さん...。
瞳に冷たい光が灯り、見開いた瞳孔は焦点をボスに定める。
「はぁ...?兄さんに手を出したら、此処を潰すよ?
冗談抜きで...」
「...冗談だ。
テメェを敵に回したら並の者は死んじまう。」
「よくご存知で。」
ボスが銃から手を離し、ボクは表情を戻す。
互いに力量を知っているので、抗争にまでは発展しない。
兄さんがしたいって言うのなら話は別。
そろそろ返した方が良いよね。
傍から見てこの図は誘拐に見えなくない。
ボスの部下に見られたら...、想像するだけで悪寒が。
「ラーベストさん!!あっちに行って!」
「ぁ...はい...」
さん呼びは変わっていないが、当初の敬語は何処かへ行ってしまっている。
其の上この状況を楽しんでいる。
嗚呼、如何したものか...。兄さんの頼み事が。
前髪が目を掛かる。
何時もと違い、今日は完全に仕事OFFなので、前髪を上げておらず真ん中から分けているのだ。
其れに加え今は空を飛んでいるのだ。当然髪は乱れ目を掛かる。
最悪だ...。
兄さんと正反対な丸い瞳ではなく、兄さんと同じ、細い瞳で前を見据えた。
キャタナインを今一度抱き締め直す。
「...?如何したの?」
「キャタナイン...今から送り届けるから。
暫く黙っていた方が身の為だよ。」
「えっ...」
キャタナインの返事を聞く間もなく、ボクは次の落下地点で後ろへ跳躍し、空中バク転を決めた。
次いでに180度回転して進行方向を向く。
ボクが向かう所は1つだ。
早く向かおう。これ以上の空中散歩は無駄だ。
時間がある時に構おう。
キャタナインは猫みたいで面白いから。
あ、今度は猫じゃらしを買って遊びに行こう。
建物を次々に渡り飛ぶ。
スピードを上げているので、髪は後ろへ靡いている。
本当はもっとスピードを上げた方が気持ちが良いけど、キャタナインが持ちそうに無いので止めておく。
キャタナインはボクの胸に顔を埋め、静かにしている。
心無しかボクに回している腕に、力が篭っている気がする。
怖いのかな、まぁ良いかな。
死ぬ訳では無いし...。
「確か...、あそこだった、かな...」
強風で目を細めているので、視界がかなり狭いが、『ファスティマファミリー』のボスの家。
レオナルド・ファスティマはファミリーの本部とは別に家族が住む家を持っている。
家と言うより最早別荘に近いが...。
豪華な二階建てのテラス付き。
二階のベランダに繋がっている部屋は、ボスの部屋の筈だ。
幸運にもベランダの硝子張りの扉が空いている。
ボクは其の扉に向かって、思いっ切り飛び込んだ。
上空から落ちてきたので、ベランダにはひびが入ってしまった。
このベランダ、石造りだったのか。
銃のセーフティロックを外す音が聞こえた。
「誰だ...?大胆且つ予想だにしない潜入からして、凡そ予想は付くがな。」
「やぁ!レオさん!!久しぶり!
お届け物を持ってきたよ。」
ボスは部屋の奥で此方に銃を向けている。
レースのカーテンが風に煽られて、部屋の中はよく見えない。
だが、部屋にはボスの気配しか感じない。
「テメェの大好きな兄さんからのか?」
「いいや、貴方の宝物さ。」
何時もと違う低音に響く声で言うと、ボスは銃を下ろして此方に来てくれた。
ボクの腕の中に居る気絶したキャタナインを見ると険しい顔付きになった。
「オレの娘じゃねぇーか。拉致ったのか?」
「拉致ったなら戻さないよ。」
笑って冗談を言ったが、尚一層殺意の篭った視線を向けられた。
「冗談でも殺すぞ。」
「わぉ、親バカってコワーイ。」
本当に殺りかねないけどね。
一父親だが、巨大なマフィアのボスなのだ。
“殺す”の重みは一般人とは違う。
「テメェ等は“親殺し”だったな。
...解らんだろうよ。
親の気持ちってのは...、良いから返せ。何時まで抱いてんだ。撃ち殺すぞ。」
“親殺し”
知る人ぞ知るボク等兄弟の過去。
兄さんとボクは実の両親を殺した。
兄さんの意思で...。
詳細は語らないでおこう。ボクが語るより、兄さんが語った方が良い出来事だから。
ボクは別に両親の事など特に思っていない。ボクには兄さんさえ居れば、其れで構わない。
両親なんて兄さんとボクの製造機で充分だ。
ボクは笑って言葉を流す。
「すぐ殺すって言うんだから...。
て言うか、何でキャタナインはボクの事知ってたの?
レオさんボクの事言った?」
ボスは思い出したのか。苦い顔をした。
原因は貴方か...。
「あぁ、知りたいっつってたからな。
仕事仲間として...、おい、ちょっと待て...。
〝キャタナイン〟だと...呼び捨てしやがったな。」
ボスの指が銃の引き金に掛けられる。
焦って理由を話す。
「えっ、いや...違うよ!!
彼女がボクに言ったんだよ!!!
名前で呼んでって!!」
「変な気起こしたら、テメェだけで済むと思うな。」
後半の言葉に反応する。
ボクだけなら如何なろうと構わないが、他を巻き込むのなら話は別だ。
特に兄さん...。
瞳に冷たい光が灯り、見開いた瞳孔は焦点をボスに定める。
「はぁ...?兄さんに手を出したら、此処を潰すよ?
冗談抜きで...」
「...冗談だ。
テメェを敵に回したら並の者は死んじまう。」
「よくご存知で。」
ボスが銃から手を離し、ボクは表情を戻す。
互いに力量を知っているので、抗争にまでは発展しない。
兄さんがしたいって言うのなら話は別。


