第2巻 Sicario〜哀しみに囚われた殺人鬼達〜

自分で散らかしてしまった部屋を片付ける。
何でこんなに散らかしてしまったのだろう。思い返してみても解らない。
あれからどれ位経ったんだ。
そうだ。絵を描き終えたんだ。
“あいつ”の絵を描いたんだ。
当時はあまり構ってやれなかったから...。それでも文句言わず俺の帰りを待っていてくれた。
俺が何をしても唯待っていてくれた。
何時も笑顔で「お帰り、お兄ちゃん」って、帰りが遅くなっても、怪我をしてても。
まだガキだってのに...。

一筋の涙が頬を伝う。


「お前を幸せにするって誓ったのになぁ...。」


インターホーンが聞こえた。
居留守を使っても良かったが、悪い印象は出来るだけ与えないでと、ギフトに言われていたのを思い出した。
渋々モニターで誰が来たのかを確認した。

モニターに映っているのは、腹立たしい笑顔の持ち主ドールと近くに住んでいるシャタムと言うガキだ。
ドールの奴シャタムと知り合いだったのか。

玄関に向かい扉を開ける。
ドールの笑顔が降りかかる。
こうも腹の立つ笑顔は無いと俺は思う。


「何しに来たんだよ...。要が無いなら帰れ。」

「兄貴!!そんな冷たく言わなくても良いじゃねぇーか!」


俺の服を引っ張ってシャタムが言う。
服が伸びるから止めてくれ。


「別にお前は良い。」


頭を撫でつつ誤解を解く。
活発だが悪いガキでは無いからな。寧ろ良い子だ。
ドールが両手を頬に当てて、頬を膨らます。


「えぇーボクは駄目なの?」


其れで可愛いと思っているのか...。
28のおっさん手前が。


「お前の顔見てるとイライラする。」

「酷いなー、結構モテるんだよ!!取り放題なんだよ!!」

「別に自慢されても何とも思わねぇーよ。」

「セルリアは美人さんだからね。
あ、ボク男でもいけるよ。」


俺の顔に両手を添えて笑顔で言う。
絶対ヤらないからな。誰が化け物地味た奴と...。
そもそも男となんて御免だ。


「俺にそんな趣向は無ぇー。触んな!
つか、ガキの目の前で何つー事言ってんだ。」


ドールの手を払い除け、シャタムへ視線を向ける。
キラキラと純粋な瞳で見つめられていた。


「大人の男って色々あるんだな!兄貴!!」

「変な誤解ができちまったじゃねぇーか!!」

「まぁまぁ良いじゃない。成長ってのは色々あるんだよ。」


不意にドールが俺の耳元に口を近づける。
驚きで目を丸くしたまま何も出来なかった。
ドールにしては珍しく低い声色で、抑揚もなく囁いた。


「良かった...完全に壊れてなくて...」

「テメッ...!?」

「金髪の兄貴!兄貴に何言ったんだよ!!オレにも教えてくれよ!」

「駄目だよ〜。」


直ぐに何時もの調子になって、シャタムとじゃれ合うドール。
何でドールが知っているんだ。
勘か...、ドールは無駄に鋭い所があるから。


「はぁ...取り敢えず中は入れよ。何時までも玄関で喋ってる訳にはいかねぇーだろ。」

「やったね!!シャタム!早く入ろ!!」

「やったな!!金髪の兄貴!!」


何なんだ...金髪の兄貴ってのは。
中に入れたのは良いが、肝心のリビングは俺が荒らしたままだ。

...何で荒らしたんだっけ。
もう其の理由すら忘れてしまった。


「うわぁ...何これ。
セルリア!!片付けも出来なくなったの!?」

「喧嘩でもしたのか!!?兄貴!!」

「うるせぇな。
...覚えてねぇーんだよ。何でこんなに荒らしたのか。」

「へぇー覚えてないのか...。」

「んだよ其の意味深な言い方は」

「いーや、何でもないよ。
さぁ!皆で片付けよう!!」


ドールの声で俺達3人は部屋の片付けを始めた。
其の前に何でドールが仕切っているんだ。
俺のアトリエだぞ。此処は。