赤いボールペン




「あ」


今日は、完全に声がハモった。


大講義室の入り口の前で、こないだと同じように先輩と鉢合わせた。


でもこないだと違うのは、すぐに先輩は少し笑って、少し右手を挙げた。


「おはようございます」


「おはよ。寒いね」


「寒いです。先輩、今日は早いんですね」


時間はまだ講義が始まる10分前。


いつもはチャイムが鳴ると同時に入ってくるのに。


「いつもギリギリなのバレてた?」


「はい」


わたしが笑うと、先輩は恥ずかしいって感じで笑って自分の頭の後ろを触った。


その仕草が、なんかすごく新鮮っていうか嬉しかったっていうか、多分わたし、やっぱり浮かれてる。


自然に笑顔になってるのが自分でもわかる。


先輩が中に入ったのについて行くように体を大講義室の中へ。


外の寒さとは正反対な温度に包まれ、体がジワジワと温まって行くのを感じる。


いつもの定位置を見ると、よっしーと春奈の姿はなく、良太だけがそこに座っていた。