赤いボールペン




「ひかりなんてどうでもいいから早く行くぞ。もうチャイム鳴る」


良太はあまりにもひどいと思ったけど、言っていることは正論だ。


遅刻はまずい。


みんなして走って教室に向かう。


わたし達以外にもちらほら走っている人がいて、同じようにそれぞれ焦って次の講義がある場所へ行く。


「わっ、鳴っちゃった!」


「鳴り終わる前に入れば」


「「セーフっ!」」


良太とハモりながら、教室へ足を踏み入れた。


火曜日の3限は食堂から近いから助かる。


「久しぶりに全速力で走ったよ…」


一番最後に入ってきたはずの春奈姉さんが、誰よりも早く席について机に突っ伏していた。


その右隣によっしー、その隣に良太が。


わたしとすずは3人の前に、各々何も言わず座った。


あー疲れた。


春奈の言うとおり、多分みんなが同じことを思っているはず。


大学入ってから体動かすこと減ったしな〜。


「あー髪ボサった」


すずが、走ったせいで乱れた長い髪をせっせと手ぐしで整えている。


「長いと大変ね」


「あたしもひかりくらい切ろうかなあ」


わたしは毛先が顎のラインくらいのショートボブである。


夏まではポニーテールをするほど長かったんだけど、先月なんとなくばっさり切ったばかり。


こんなに短くしたのは初めてなんだけど、あまりの楽さにかなり気に入っている。