赤いボールペン




「何年生ですか?」


「3年です」


「わたしは1年です」


3年生か。


どうりで大人っぽいわけだ。


「大人っぽいですね」


そう言ったのは、彼の方。


「そうですか?」


「うん。背が高いからですかね」


「コンプレックスなんですよね…」


「そうなんですか?全然そんなことないのに」


年下だとわかってからも変わらず敬語で話してくれる彼。


最初とは違って、少し微笑みながら話すから、なおさら優しいなと感じる。


「あ、でも先輩と話してると自分が小さくなった気分になります」


「あはは。俺184あるから」


184センチだって!?


「20センチも差があります!」


突然声のボリュームが上がったわたしを見て、彼…先輩は、一瞬びっくりしてから、笑った。


話した中で一番大きな笑顔。


笑うと目が垂れて、優しそうなのが全面に出てくる。


人の笑顔を見て、こんなに感動したことが今まであっただろうか。


否、なかったですわ。


「なんでそんなに目キラキラさせて言うの」


「いや、だって、あんまそこまで差がある人と会ったことなくて…」


「そんな珍しいほどでかいかなあ俺」


なんだか恥ずかしさがジワジワと込み上げてくる。


敬語がなくなった話し方も、なんだかくすぐったいというか嬉しいというか。