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なんと講義が3限からなので、のんびり登校できる火曜日はわたしは好き。
でも、3限からなのは5人の中でわたしだけ。
あとの4人は、2限に講義を取っていて、合流するのはお昼から。
こういう、時間割が人によって違うってのも大学生っぽいよね。
てことで火曜日はいつも駅から大学まで1人で行くことになっている。
今日もマフラーをぐるぐる巻きにして、そこに顔を埋め、コートのポッケに両手を入れながら歩く。
寒い。
晴れてるおかげでまだあったかいけど……それでも寒い。
まだ11月中旬だというのにこのザマじゃあ、この先わたしはどうなってしまうのだ。
イヤホンから流れる陽気な音楽と晴れた天気とは裏腹に、わたしの気分はあまりいいものではなかった。
ポッケから左手を抜いて腕時計に目を向けると、3限が始まる30分前。
みんなまだ食堂いるかな〜。
大学に着き、教室にではなくそこへ向かって歩く。
いるかな〜なんて思いつつも絶対に4人は学食にいる。
ギリギリまで教室に行きたがらない連中だからね。
これもいつものこと、なんだけど、今日は違った。
食堂の入り口の前で、"彼"と鉢合わせた。
目が合ってるのに、お互い口を「あ」という形にしたままで、数秒間そのままだった。
月曜日以外で、初めて見たかも。
「あの」
先に言葉を発したのは、彼の方だった。
単純に驚いた。
いや、こんな状況で何も言わずに去るのもなんだかなとは思ったけど、わたしは会釈してそのまま行こうかなと思ってたもんだから…。