赤いボールペン




「?」


「あ、すみませんっ。全部ありますか?」


「多分大丈夫です。拾ってくれてありがとう」


そう言って、プリントを渡した時と同じようにペコッと軽く頭を下げると、彼はそのまま大講義室から出て行った。


なんか……やっぱり今日はラッキーな日だ。


1日でこんなに話せるとは。


感動でなのかよくわからないけど、彼が出て行ったその後を、ボーッと立ったまま見ていた。


「ひかり?どした?」


「え、あ、や、なんでもなし」


拾ってくれてありがとう、だって。


すごい丁寧で優しい言い方だったな…。


「ひかりがボーッとしててキモいな」


「あんたもついさっきまでそうだったでしょ」


「れ、ボールペン落ちてる」


良太はしゃがんで、落ちていたそれを拾ってくれた。


赤いボールペン。


わたしのだ。


「ひかりの?」


「うん、ありがとー」


わたしはそれを受け取って、よく確認もせずそのままペンケースにしまった。


さあ、お昼だ。


「お腹空いたー」