私たちはクリスマスマーケットにやってきた。

「うわぁ!可愛い屋台がたくさん!」

「毎年11月中旬からクリスマスまで催されるんだ。」

「ねえ、見て!人形?」

「これはクリッペと言ってね、キリストの誕生の場面を表現しているんだ。」

「可愛いのね!あっちにはメリーゴーランドがある!」

「夜になるとライトアップするから、もっと綺麗になるよ。」

「それなら、夜来れば良かったね。」

「いや、夜来たら寒くて凍え死ぬよ…。」

「今でも十分寒いもんね…。」

「何か温かいものを飲もうか?」

「グリューワイン?」

「やめておきなよ…。」

「なぜ?」

「あんなの、美味しくないよ?」

「そうなの?」

「キンダーポンチにしよう。こっちのほうがまだいいよ。」

「それ、なあに?」

「子供用でね、アルコールが入っていないんだ。僕は飲まないけど。」

「ニコラスは何を飲むの?」

「ホットチョコレート!」

キンダーポンチは可愛らしいマグカップに入っていた。

「メルヘンチックね!どこもかしこも。」

「ははは、言いたいことはよくわかるけれど、メルヘンチックという英語は存在しないよ。」

「えー!そうなの?」

「メルヘンはドイツ語なんだ。それに英語の-ticを付けた、和製英語だろうね。」

「そうなんだー!でも、私、この言葉好きよ。夢があって!」

「ははは、そうだね。」

「ねえ、あっちの屋台も見てみようよ!」

「いいよ。」

「キャンドルがたくさん売っているね。」

「うん、これ、見て。下でキャンドルを灯すと、羽根車が回るんだ。」

「面白いのね!」

「ひとつ、買おうか。」

「うん!」

「良いものが見つかって嬉しいよ。」

「本当ね。」

「そろそろ疲れたかな?」

「そうねー、帰りましょう。」

アパートへ戻って、私は先ほど買っておいたナッツを食べた。それは香ばしくて、甘くて、美味しかった。

「ねえ、ドイツって素敵ね。」

「ははは、気に入った?」

「うん、とても。」

「僕はこの時期の町が一番好きなんだ。」

「わかる気がする。」

「君と共有できて良かったよ。」

「ずっと、このままならいいのにね。」

「そうだね。」

「なんだか、眠たくなってきちゃった。シャワーを浴びてもいい?」

私はシャワーを浴びると、すぐに眠りに落ちた。

まどろみの間にピアノの音が聴こえる。リストの愛の夢。美しい夜想曲、穏やかでロマンチックで甘いメロディー。
私は今、愛に包まれている。