ーやあ、元気かい?僕は風邪をひいちゃったみたいで、この1週間は家に引きこもっていたよ。そっちとドイツの気温差についていけなかったんだね!君の魔法の手さえあれば、こんな風邪なんて簡単に吹き飛ぶんだけどなぁ。ねえ、逢いたいよ。奏美は大丈夫?体調には気をつけてね。
そうそう、この間、仲間と演奏会の打ち上げをしていた時、君の写真を見せたらみんなびっくりしていたよ。綺麗だって!綺麗な奏美、僕のschatz…病気の時ほど人恋しくなることはないね! 愛を込めて ニコラスより



季節は移ろい、桜の花が咲く頃には進路が決まっているはずだった。

「ねえ、日本の大学って4月入学でしょう?奏美はもう試験の結果出たの?」

「私は来年の帰国子女枠で受験するの。ミンジーは?」

「私は一度こっちの大学に入学して、韓国の大学に編入する予定。」

「韓国って、受験戦争がすごいんだろう?」

ジョッシュが想像できない、とブツブツ言った。

「まあね。親も子も必死だから。編入した方が入りやすいの。」

「応援歌とかあるんだって?」

「なにそれ?校歌のことー?」



あと1学期しか残っていない。これで高校生は終わり。振り返ってみると、大変なこともあったけれど、楽しかった。

私は卒業式と統一試験が終わったらドイツへ1ヶ月行くことになっていた。

「奏美さ、お兄ちゃんのところに行くんでしょ?」

「うん、その予定。」

「その後、また離れ離れになっちゃうの?」

「仕方がないよ。私、ドイツの大学には進学できないし…。ニコラスだって、日本では勉強できないでしょう?」

「それでも!好きなら一緒にいたくないの?」

「ミンジー?」

彼女は泣いていた。

「お兄ちゃんも、奏美も、大人のふりしすぎなんだよ!私は一緒にいたい。好きな人と。」

「ーー。」

「離れたくない…。」

「泣かないで…?」

「本当は寂しがり屋のくせして、いつも我慢して。」

「ずっと一緒にいるためには、我慢が必要な時もあるの。」

「何にもわかってない!」

「そっちこそ、わかってない!私たちはまだ若いし、それぞれやりたいこともある。」

「そんなこと言ってたら、そのうち破局だよ?」

「ーー。」

「大好きな二人だか、幸せになってほしいの。」

「ねえ、大丈夫だから。それより、何かあったの?」

「卒業したくないー。」

ミンジーはその後わんわん泣き続けた。