ー久しぶり、元気だった?もう夏休みの予定は決まった?僕は用事があって韓国に行かなくちゃならなくなったよ。もし、クリスマスに日本にいるなら逢いたいな!すぐ隣の国にいるからね。


ー久しぶり!毎日メールするって言ってたのに、なかなかできなくてごめんね。私は、クリスマスには日本にいる予定だよ!毎年、この時期は東京のおばあちゃんの家で過ごしているの。だから、ぜひ逢いたいな。何日に来る予定なの?


ー僕の方こそ、約束したのに連絡できなくてごめんね。
ああ、日本へは24日には行けるよ!大丈夫そう?


ー大丈夫よ!どこに泊まる予定?


ー新宿あたりのホテルに泊まろうかと思ってるんだけど。


ーいいと思うよ。当日は空港まで迎えに行くからね!



12月から夏休みに入るけれど、学年末の統一試験は休み期間中にあるので、帰国するのは10日以降になりそうだ。

まず帰ったら美容室に行こう。やはり、慣れ親しんだ人の方が要望しやすい。そして、友達に会ってショッピングをして、おばあちゃんとご飯を食べる。それから…日本でやりたいことはたくさんある。

ニコラスに東京のいろいろなところを案内してあげよう。コテコテの観光スポットも、裏道のカフェも。

そんな妄想を膨らませながらする試験勉強はなかなか捗らなかった。


「奏美、進んでる?」

「いや、ダメ。さっぱりわからない。」

図書館で小声で話す。

「記述統計学、難しすぎる…。こんなの、社会に出て役に立つのかな?」

「それより、こっちのアナリーゼ、音楽こそ、社会の役に立たないよ…。」

「ー奏美は将来何になりたいの?」

「私は、国連機関で働きたいの。特にUNHCRとか。」

「U…なに?」

「UNHCR。国連難民高等弁務官事務所のこと。」

「わかんない!何をするの?」

「難民の救済事業をしているの。」

「へー。」

「ミンジーは何になりたいの?」

「私は韓国に戻って、幼稚園の英語の先生になりたいの。」

「そうなんだ。子供好きなの?」

「うん!」

「二人とも、音楽とも数学とも関係ない職業かもね。」

「きっとどこかで役に立つ日が来ると思うよ。数学も、音楽も。」

ミンジーの言葉はなんとなく重たく聞こえた。