手首に手枷をつけられたまま魔法使い達に連れて来られた先は勿論国の城。大きな門と扉をくぐってしばらく歩き続けると王室と思われる部屋へとたどり着いた。部屋の奥には王様と思われる人物が立派な椅子に腰を掛けていた。魔法使い達に背中を押され王様の目の前まで行くと両肩を掴まれものすごい力で下へ押さえ付けてきた。俺はバランスを前に崩しそのまま頭と体を床へと押し付けられた。
そして王様と思われる人物の口が開く。

「そなたがあの大罪人レオの息子か」

「・・・違う。確かに俺のお父さんはその名前だけど、大罪人なんかじゃない」

頭を押さえられながらも会話をする。苦しそうな俺の顔を見るなり王様は鼻で笑う。

「親子だけあって顔がそっくりだと思っていたが、その鋭い目つきは母親譲りか?」

「知らない。お母さんは出て行ったんだ」

「出て行った・・・か。良いことを教えてやろう」

そう言って椅子から腰を上げると俺を見下ろしながら口角を上げて歩み寄って来た。その近付く足から目を離さずにいると王様は俺の目の前でしゃがみこみ、耳元で囁く様に嫌な事を言う。

「そなたの母親は、そなたの父親に殺されたんだ」

背筋が凍りついた。
突然突きつけられた嘘が真か分からない言葉に一瞬どころじゃない。数分間耳を疑ったのだ。

「母親だけではない。今まで沢山の人を殺してきたんだ。そなたはずっと、殺人犯と暮らしておったのだ」

王様の言葉を次々と聞くだけで心まで凍ってしまう。嘘だと言って反論したい。だけど、お父さんが殺人犯ではないという確証が持てなかった。
仕事は不明。家に帰って来た時の所持金の差が激しい時もあった。

「父親が憎いか?母親の命を奪い、お金が安定しない生活でまともなものも食わせてくれなかったであろう。そんな父親が憎いか?」