「・・・人形なんか大嫌い」

人形は人間と違って記憶力に限界がない。百年前に造(う)まれても、千年前に造(う)まれても過ごした全ての時間を忘れない。見えるはずのない目に風景を焼き付けて、あるはずのない脳に出来事を溜め込む。人間よりも脆いくせに中身は無駄に優秀。レオはそんな"自称双子人形"を心の底から嫌った。

「え、俺達レオ先輩に嫌われてるの?」

「え〜、てっきり好かれてるのかと思ったけど」

「そんなに人間に好かれたいなら保育園にでも行ったら?人気者になり過ぎて腕ちぎられないようにね」

脅しのつもりか挑発のつもりか、レオは翔馬と相馬にそう言い残すと今度こそ巳鶴の元へと戻って行った。