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意識を無くして眠ってしまった巳鶴をレオは抱き上げてベッドの上へと移した。女の子の体にダメージを与えてしまったことは反省しているが、これしか方法がなかったのだ。巳鶴を仰向けに寝かせ、毛布をかけるとレオは足を風呂場へと向かわせる。そして風呂場の扉を開くと同時に声を放つ。

「何でここにいるの?」

電気もついていない風呂場の浴槽には生徒会メンバーである双子、翔馬と相馬がいた。二人は悪戯な笑みを浮かべるとわざとらしく風呂場に声を響かせる。

「あ〜あ、見つかっちゃった。相馬の鼻息が荒いからだよ?」

「え〜、翔馬があくびばっかりするからでしょ?」

「どっちもうるさかったよ」

レオの言葉に翔馬と相馬は顔を見合わせて「マジでか」と言わんばかりの表情をする。

「ほんとに好きだね。不法侵入」

「人聞きの悪い表現やめてくださいよ〜。相馬と隠れんぼしてただけじゃないですか〜」

翔馬の言葉に相馬は同意の反応を見せる。この二人の相手をするのが疲れるということを知っているレオは風呂場に背を向け巳鶴の元へと戻ろうとした・・・が、両腕を双子に掴まれ動きを止めてしまう。レオが振り返ると双子は声を合わせてレオに問う。

「レオ先輩はどうして皆に何も言わないんですか?」

その問いにレオはうつむくことしか出来なかった。今の俺からしての年上に先輩呼びされるのは少し嫌気がさす。黙ったままでいるレオへの双子の質問攻めは止まらなかった。

「呪われた人間であることを知られるのが怖いんですか?」

レオの顔が歪んでいく。双子からの質問に対しての頭痛に苦しんでいるのだ。レオの気も知らない二人の口はまだ塞がらない。

「恋心にまで嘘をつくなんて、臆病者」

「うるさい!!」

頭痛と質問の苦痛に耐えきれなかったレオは巳鶴が眠っていることを忘れて思わず声を上げてしまった。そこで双子の声は止む。双子の声が止んだからと言ってレオの頭痛がおさまるわけではなかった。両腕を解放されたレオは頭を抱えしゃがみ込んでしまった。

「君たちに・・・何がわかるの。俺のことなんて一年すれば周りの奴らは忘れる・・・それなのに、何で君たちは忘れてくれないのさ!?」

「人形だからだよ」

その双子の発した言葉はレオの心を痛めつけているわけでも誰かを侮辱しているわけでもないのに妙に冷たく、鋭く風呂場に響いた。