主争奪魔法学園

時間が流れ、今は放課後。
黒板には暗号と思われる言葉しか書かれておらず私は思わず溜息を吐く。どれが計算どれが呪文なのだろうか…寮に帰ったら凌太に教えてもらおう。だがその前に生徒会室へ行かなければならない。そのことを考えると更に深い溜息が出る。
昴先輩への好感度は上がったものの未だに他の男子とは関わっていないため好感度どころの問題ではない。同じ部屋で空気を吸うことさえも自殺行為に過ぎない。教室ですら苦しいのだ。この前童顔男子に飛びついたのはただの勢い。素であんなことが出来るはずがない。

「思い出しただけで手に蕁麻疹が…これから狭い部屋で性欲の塊共に混ざらなければならないのか……死にたい」

一人で闇を抱えたオーラを放ち、ぶつぶつ呟きながら生徒会室へと向かう…向か……生徒会室とは一体何処なのだろうか。

「うっ、頭が割れる!」

「俺が割っていい?」

頭を抱えていると背後から殺気と共におぞましい言葉が聞こえた。こんな言葉をぶつけてくる人物は一人しかいない。

「レオ…あんた私に恨みでもあるの?」

「別に?ただ巳鶴が邪魔で廊下を歩けなかっただけ。声かけても気付かないし一人でぶつぶつ言ってるし…どこのホラー映画の幽霊かと思ったよ」

「私が幽霊ならレオは妖怪だね」

「ちょっとどーいう意味?」

そのまんまの意味だと心の中で言い返す。レオを無視して生徒会室を探そうと思い足を運ぼうとしたが、それはレオに髪の毛を掴まれたことによって阻止された。

「いった!何すんの!?」

「どこ行くつもり?寮に帰るなら階段を下りるはずでしょ」

「生徒会の人達に呼ばれてるから生徒会室を探しに行くの!離してよ!」

「生徒会室ならそっちじゃない。こっち」

そう言ってレオさんは掴んでいた髪の毛を離すと私に背を向けて歩き出した。私はその背中を少し睨みながらも自然とついて行く。廊下を歩き続けていると、"生徒会室"という文字が掲げられた部屋が目にとまった。
レオは私と同じ一年なのに妙に校舎内について詳しいと思う。もしや留年者?などという思考を巡らせてみる。その間にレオはノックもせずに生徒会室の扉を開く。すると、その生徒会室から聞こえた声と言葉によって私のレオは留年者だという思考が止まった。

「巳鶴は女だ」

声の主は凌太。そして、凌太のその言葉を黙って受け止めていたのは昴先輩だ。勿論私はその状況を飲み込めていない。凌太が…私の性別を他人に教えるなど予想外だった。私の感情はどうにも忙しいらしい。驚きは勿論あるが凌太に対して怒っていいのか、または裏切られた気がして悲しくなって泣いていいのか、もう怒りも悲しみも通り越して呆れていいのかも分からない。
私とレオさんの存在に気付いた生徒会二人は目を見開いて巳鶴に問いかける。