「ねぇ、秋星くん」
名前を呼ばれ、目線を空から昴先輩へと移すと、昴先輩は少し困ったような表情をしていた。
「どうしたんですか?」
「・・・いや、やっぱなんでもない」
そう言うと真剣な顔をして考え込む。悩み事かな?やはり凌太のようなちゃらんぽらんな会長の下で色々働いてるからストレスが溜まるのだろうか。
「ストレスはあまり抱え込まない方がいいと思いますよ?」
「へ?あぁ、そうだね・・・そういえば会長に頼まれてた書類を取りに行かなきゃ。秋星くんも早く教室に戻るんだよ」
昴先輩は私と目を合わせずにその言葉だけを残して屋上から去ってしまった。少し動きと言葉がぎこちなかったのは気のせいだろうか。私は床におろしていた腰を上げると精一杯伸びをして空を仰いでから足を教室へと向かわせた。
______
廊下を歩く足が心臓の鼓動とリンクする様に段々と速くなる。会長に頼まれた書類がを取りに行くだなんて嘘をついてまで屋上を去った理由はただ一つ。会長に・・・凌太に秋星くんの性別をもう一度確認するためだ。この間確かに胸を見た・・・が、やはり性別を疑ってしまう。自分が人を好きになるなんて有り得ない。いや、それ以前に同性に好意を抱くなどそんなのただの気の迷いでしかないのだ。
しかし、一向に鎮まらない心臓の鼓動を体が感じる度にその気持ちを認めざるを得ない思考が働く。
「違う・・・違う違う違う」
抑えきれない感情が出てしまう。人を好きになってはいけないのに・・・将来のためにも、家族のためにも、許嫁と結婚しなくてはならないのに。
今まで、あまり褒められたことがなかった。自分の魔法で感動されたこともなかった。社交会やパーティーなどで幾多の女性から褒められたことはあるがそれは純粋な気持ちではなく俺の財力と権力を欲しがっているから。俺が嫁に欲しがる女はいなくても俺を婿に欲しがる女は沢山いた。そのため、俺の将来の嫁は親に決めさせたのだ。
女は面倒くさい。だから親に自分の将来の全てを任せた。単純な話だ。このまま時の流れにも身を任せて大人になってその許嫁と結婚すればいいだけだった。
それなのに・・・自分を乱してくる人物が現れてしまった。
自分の魔法にあんなに感動してくれて褒めてくれて・・・巳鶴の目を見て昴は思ったのだ。
___心が綺麗
巳鶴のその綺麗な心に惹かれてしまったのだ。
悩みながら廊下を歩き続けてどれくらい経つだろうか。自分がどこへ向かっているのかも分からなくなってしまった昴の足が人にぶつかったせいでやっと止まった。
「あ、すみません。前を見ていなくて」
昴はすぐに丁寧に謝るが、その相手が凌太だと気付くと肩を落とした。
「なんだ会長か。丁寧な挨拶をして損しちゃった」
「どういうことだよ」
昴の言葉に苦笑しながらも凌太は昴が悩んでいることを察した。
「昴、言いたくなければ言わなくていいが・・・何悩んでんだ?」
昴はその問いに困りながらも凌太に信頼を預けている。凌太の問いに質問で返す。
「会長、秋星くんは・・・男だよね?」
昴の問いに凌太は一瞬ドキリとする。緊張しつつも昴に嘘を隠し通そうとする。
「あのなぁ、いつまで疑って・・・」
凌太の言葉は最後まで続かなかった。昴は今まで色々な悩みを凌太に打ち明けてきたが全て物事に対してだった。人物を疑ってここまで悩むのはこれが初めてだ。
「巳鶴の性別を疑う理由を教えてくれたら答えてやる」
真剣な悩みには真剣に答えなければならない。この昴の悩みは自分自身にとっても深刻なことなのかもしれない・・・凌太はそう思ったのだ。
名前を呼ばれ、目線を空から昴先輩へと移すと、昴先輩は少し困ったような表情をしていた。
「どうしたんですか?」
「・・・いや、やっぱなんでもない」
そう言うと真剣な顔をして考え込む。悩み事かな?やはり凌太のようなちゃらんぽらんな会長の下で色々働いてるからストレスが溜まるのだろうか。
「ストレスはあまり抱え込まない方がいいと思いますよ?」
「へ?あぁ、そうだね・・・そういえば会長に頼まれてた書類を取りに行かなきゃ。秋星くんも早く教室に戻るんだよ」
昴先輩は私と目を合わせずにその言葉だけを残して屋上から去ってしまった。少し動きと言葉がぎこちなかったのは気のせいだろうか。私は床におろしていた腰を上げると精一杯伸びをして空を仰いでから足を教室へと向かわせた。
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廊下を歩く足が心臓の鼓動とリンクする様に段々と速くなる。会長に頼まれた書類がを取りに行くだなんて嘘をついてまで屋上を去った理由はただ一つ。会長に・・・凌太に秋星くんの性別をもう一度確認するためだ。この間確かに胸を見た・・・が、やはり性別を疑ってしまう。自分が人を好きになるなんて有り得ない。いや、それ以前に同性に好意を抱くなどそんなのただの気の迷いでしかないのだ。
しかし、一向に鎮まらない心臓の鼓動を体が感じる度にその気持ちを認めざるを得ない思考が働く。
「違う・・・違う違う違う」
抑えきれない感情が出てしまう。人を好きになってはいけないのに・・・将来のためにも、家族のためにも、許嫁と結婚しなくてはならないのに。
今まで、あまり褒められたことがなかった。自分の魔法で感動されたこともなかった。社交会やパーティーなどで幾多の女性から褒められたことはあるがそれは純粋な気持ちではなく俺の財力と権力を欲しがっているから。俺が嫁に欲しがる女はいなくても俺を婿に欲しがる女は沢山いた。そのため、俺の将来の嫁は親に決めさせたのだ。
女は面倒くさい。だから親に自分の将来の全てを任せた。単純な話だ。このまま時の流れにも身を任せて大人になってその許嫁と結婚すればいいだけだった。
それなのに・・・自分を乱してくる人物が現れてしまった。
自分の魔法にあんなに感動してくれて褒めてくれて・・・巳鶴の目を見て昴は思ったのだ。
___心が綺麗
巳鶴のその綺麗な心に惹かれてしまったのだ。
悩みながら廊下を歩き続けてどれくらい経つだろうか。自分がどこへ向かっているのかも分からなくなってしまった昴の足が人にぶつかったせいでやっと止まった。
「あ、すみません。前を見ていなくて」
昴はすぐに丁寧に謝るが、その相手が凌太だと気付くと肩を落とした。
「なんだ会長か。丁寧な挨拶をして損しちゃった」
「どういうことだよ」
昴の言葉に苦笑しながらも凌太は昴が悩んでいることを察した。
「昴、言いたくなければ言わなくていいが・・・何悩んでんだ?」
昴はその問いに困りながらも凌太に信頼を預けている。凌太の問いに質問で返す。
「会長、秋星くんは・・・男だよね?」
昴の問いに凌太は一瞬ドキリとする。緊張しつつも昴に嘘を隠し通そうとする。
「あのなぁ、いつまで疑って・・・」
凌太の言葉は最後まで続かなかった。昴は今まで色々な悩みを凌太に打ち明けてきたが全て物事に対してだった。人物を疑ってここまで悩むのはこれが初めてだ。
「巳鶴の性別を疑う理由を教えてくれたら答えてやる」
真剣な悩みには真剣に答えなければならない。この昴の悩みは自分自身にとっても深刻なことなのかもしれない・・・凌太はそう思ったのだ。
