主争奪魔法学園

「え、いいんですか!?」

ドSな面以外は優秀な昴先輩の魔法に興味がないわけがない。私は目を輝かせながら「是非見たいです」と言った。昴先輩の魔法に興味を持った私を見て昴先輩は何が面白いのか、くすりと笑う。

「おっけー。じゃ、始めるよ。秋星くんと俺だけの秘密の勉強会」

「言い方がいやらしいのでやめてください」

昴先輩は私のツッコミをスルーすると右手を前に差し出すと手の平を上向きにして呪文を唱えた。

「eauM解放」

呪文を唱え終えると一秒もせずにその手の平から水玉が出現した。本当に精神を集中させているのかと疑ってしまうような余裕のある表情のまま昴先輩は左の手の平を上に向けながら前に差し出し続けて呪文を唱えた。

「ventM(ヴォンエム)解放」

その呪文は恐らく凌太の言っていた属性の中では風属性の呪文だろう。私がそう思ったのは呪文を唱え終えると同時に左の手の平に空気の渦が出現したからだ。

「fusion(フィジョン)」

またもや初めて聞く呪文が私の耳に届く。すると、左手の渦と右手の水が混ざり合い綺麗な水の渦が完成した。気が付けば私は淡々と呪文を唱えていく昴先輩の姿とその魔法に釘付けになっていた。

「凄い・・・」

「これだけで感動するのはまだ早いよ」

自信満々にそう告げた昴先輩は水の渦を右手に乗せると空いた左手に再び魔法を出現させる。

「lumiM(ルミエム)解放」

次は光属性の魔法・・・左の手の平には光の塊が一つ浮かんでいる。そしてそれを今度は水の渦と混ぜ合わせる。すると、光が水の渦を包み込み消してしまった。一体水の渦はどこにいったのだろうか・・・そう思い昴先輩の右手を前のめりになってまじまじと見つめる。そんな私を見て昴先輩が笑いを堪えていることを私は知らなかった。

「ばぁー!」

「うぇぁあ!?」

突然私に向かって声を張り上げた昴先輩に驚き、バランスを崩した私は思わず尻もちをついてしまった。昴先輩はお腹を抱えて笑い声を上げる。

「びっくりした・・・何するんです・・・」

昴先輩の意地悪なのだと気付いた私は言葉をいい返そうとしたがそれは出来なかった。空から降り注がれる光と水の雨に目と心を奪われたのだ。

「え、何これ・・・」

もしかしてこの光と水、さっき昴先輩が作り上げてた魔法の?

「どう?綺麗でしょ?」

昴先輩は私の顔ではなく空を見上げながら聞いてきた。私はその言葉にどう返せば良いのかが分からなかった。

「綺麗で表すには勿体ないです。"綺麗"以上の言葉があれば良いのに・・・昴先輩、カッコいいですね」

本当にカッコいい。こんな魔法を簡単にやっだなんて・・・私も昴先輩の顔を見ずに空を見上げて喋る。その時私は気が付かなかった。昴先輩が私を見つめていたこと。昴先輩が赤面していたこと。そして、昴先輩が男だと認識している私に恋に落ちたことを。