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「凌太」
ベッドに腰をかけている凌太の背中から腕をまわして抱きつきながら名前を呼ぶ。
「・・・巳鶴。お前男に何してんのか分かってんのか?」
私の手首を優しく掴みながらそう問いかけてきた凌太に私は「うん」と短く答えた。それを合図に私の唇に温もりが伝わる。身ぐるみを剥がされやがて互いの体温を分かち合う。髪も心も掻き乱される。
「凌太っ・・・もう・・・だ__」
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「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」
「うぉあ!?なんだ!?」
硬い床から勢いよく身を起こした私の隣でびくっと肩を跳ねらせたのは蛍さんだった。
「なんて色気のない起き方・・・レオさんに見せたかったわ」
「あれ、ベッドの上が青空だ」
「しっかりしろ」
蛍が呆れたという様な目で私を見てくる・・・。とりあえず夢で良かったと心底ホッとしている。寝ている時くらい何もかも忘れて心を安らがせたいのにこんな夢なんて見ていたら逆にハートにヒビが入ってしまう。私の顔色を伺った蛍さんが心配そうな顔をして問いかけてくる。
「大丈夫?顔疲れてるけど」
「あぁ、うん。大丈夫。ちょっと最近色々な人と関わり過ぎて疲れちゃっただけ」
蛍さんに心配かけないように笑顔でそう答える。私の笑顔を見た蛍さんも少し間をあけてから微笑んでくれた。
「そろそろ教室に戻る?蛍さん」
「・・・蛍」
蛍さんは自分の名前を自分で呼ぶと私の目をまっすぐ見てまた同じ名前を口にした。
「蛍・・・って呼んで。名前呼びがいい」
蛍さんのわがままで可愛い要求を私は数秒後に受け入れる。
「・・・教室、戻ろっか。蛍」
要求を受け入れてくれたのが嬉しかったのか蛍は頷くと立ち上がって可愛いらしい笑みを浮かべながら屋上のドアノブに手をかける・・・が、蛍がドアノブを回す前に屋上のドアが開いた。
「うわ!」
予想外の出来事に蛍はバランスを崩し開いたドアの向こうへと体が前へ倒れていく。しかし、蛍の体が床に打ち付けられることはなかった。蛍の体はドアの向こうにいた人物によって受け止められたのだ。
「おっと、大丈夫ですか?」
その聞き覚えのある声に私は頬を引きつらせた。
「す、昴先輩・・・」