主争奪魔法学園

レオさんの言葉を否定して蛍さんは自分のことについて説明し出す。

「俺がこの学園に入学したのは・・・ある人を追いかけてるからなんだ。とてもカッコよくて、優しくて、頼れる人」

「カッコよくて、優しくて、頼れる人?そんな人がこの学園にいるんだ・・・名前は?」

「分からない。これから、私のこと全部話すね」

蛍さんはそう言って自分の過去を語り出した。



____その出来事は梅雨の時期。
住宅街にある一件の家に怒号が響いた。

「何でお前は俺の言うことが聞けねぇんだ!!!」

その怒号と共に私の腹に強烈な痛みが走る。父からの蹴り。それが日常になっていた。助けを求めても母は見て見ぬフリをする。兄は帰りが遅いため父の虐待には気付いてくれない。

「聞いてんのか?ぁあ!?誰のおかげで食っていけてると思ってんだ!!親に迷惑かけるようなことしてんじゃねぇよ!!!」

「うっ・・・ご、めんなさい」

私は何かが詰まったような喉で父に謝る。が、その声は届かない。

「何か言えよおら!お前みてぇな娘こちとら欲しくなかったんだよ・・・なのに生まれてきやがって・・・女は面倒くせぇんだよ」

私はもう限界だった。私が悪いなら反省して謝る。でも、存在自体を否定された。

「う・・・うぁぁああああ!!!!」

声が出ないはずの喉から出た悲痛の叫びを残して私は雨の中に身を投げ出した。口からも手脚からも血流れているが、そんなことを気にする暇もなく私はひたすら走った。靴も履かずに外に出た私は足の裏まで傷だらけになった。傘も持っていないため髪も服もびしょ濡れだ。痛い、寒い、苦しい・・・死にたい。それ以外感じるものはなかった。
朦朧とする意識の中我に返った時の景色は橋の手すりの上だった。真下には雨のせいでかさ増しした流れの激しい川があった。
・・・ここから落ちたら、今より楽になれるかな?