主争奪魔法学園

要約本題に入れた。そう思うとさっきまでの緊張が体の芯から溶けてなくなったかのように心を落ち着かせることが出来た。レオの問いにピアスの男は片眉を上げて答えた。

「佐久間蛍?それって、あいつのことか?」

"あいつ"と呼ばれた人物をピアスの男が視線で教えてくれた。教室の窓から中庭を眺める男…いや、女。綺麗な緑色の瞳は潤いを保っていて日光でそれを照らすと輝きを増しそうだった。肩には届いていない黒髪はカーテンと一緒に揺れていてその頭の上には彩り鮮やかな花の冠があった。
ストーカーの「頭が華やか」は花の冠のことを言ってたのか。

「……綺麗」

思わず声に出してそう言ってしまった。本当に綺麗なのだから仕方がない。だけど、頭に花の冠なんて飾って…男装する気あるのかな?顔が可愛いんだから、顔以外の他で"男"を演じなきゃダメなのに。レオは彼女…蛍さんに対してどう思ったのだろうか。少し気になった私は視線を蛍さんからレオへと移したのだがレオが疑問を持った顔をしていることにすぐ気が付いた。

「どうしたの?難しい顔して」

「いや…その佐久間蛍って奴頭が華やかなんじゃなかったっけ?アレどう見ても黒髪じゃん。どこが華やかなの?」

「え、いや、どう考えても花の冠のことでしょ。華やかじゃん」

「冠?何言ってんの?そんな物どこにあるの」

一瞬レオの言葉と自分の耳と目を同時に疑った。
……もしかして、見えてない?そんな考えが脳内に浮かぶ。私はレオに言い返すことを忘れて蛍さんを見つめていた。しばらくすると蛍さんがこちらを見て互いの視線が重なった。話し掛けるなら今かもしれない。私は蛍さんに近付いて声を掛けた。

「あの、佐久間蛍さん…ですよね?」

「はい。俺に何か用ですか?」

見た目とは少し合わない男らしい低い声に驚きながらも会話を続ける。

「私はあなたのお兄さんの知り合いで秋星巳鶴って言います。少し時間いいですか?」

「ここじゃダメ?」

「…そうですね。人のいない場所で話がしたいです」

「わかった。屋上」

蛍さんはそうやって勝手に場所を決めると私を置いて教室を出て行ってしまった。屋上に行ったんだろう。なんだか、他人と距離を置いている感じがする。女だってバレたらいけないからなのかな。