「ね、ねぇ」

私の手が自然とレオの背中へと差し伸ばされる。が、私はその腕を自分の元へと戻した。保健室まで運んでくれて、その保健室で私のわがままを聞いてくれた。それに昴先輩から助けてくれて、また寮まで運んでくれたんだもん…もう、迷惑かけられないよね。

「何?」

「いや、何でもない」

私は、自分のわがままを胸の中で押し殺した。私の言葉にレオは「あっそ」と答えると部屋から出て行ってしまった。部屋にドアが閉まった音が響くと同時にまた一人なんだという現実を突きつけられる。

「…一人って、怖いんだよ?」

苦しくなった胸を抑えながらそう呟く。もしかしたら、部屋のどこかに誰か知らない人が潜んでいるかも知れない……ついそんな事を考えてしまう。一人の時は微かな物音さえも恐れてしまう。
中学生の頃に家で起きた事件以来…私は一人が駄目なのだ。男が嫌いになったのもその事件のせい。この歳で一人が駄目だなんて皆に知られたくない。からかってくるに決まってる。だから…今は我慢だ。
そう自分に言い聞かせて毛布を被ると吐き気を堪えながら重たくなった瞼を閉じて眠りについた。