昴先輩に淡々と告げるとレオは私を肩に担いで寮へと向かう。お姫さま抱っこでもそうだが、これでもやはり目立つ。他の生徒はすれ違う度に振り返る。校舎を出て寮が見えてきた頃にレオが閉じていた口を開く。

「担任には付き添うって言ってきたから俺も早退になってる」

「え、そうなの?」

「…巳鶴に死なれた方がこっちは被せられた"変態"の汚名をなくすことできるから都合が良いんだけどね」

「あんた友達いなさ過ぎて他人への良い接し方とか知らないんじゃないの?」

「空に向かって投げ飛ばして良い?」

あ、本当だったみたい。レオの地雷を踏み抜いてしまった。やめて、投げ飛ばさないで!私は投げ飛ばされないようにガシッとレオの服を掴む。すると、レオが進めていた足を止めた。

「巳鶴ってさ、男嫌いなんでしょ?俺に担がれて…嫌じゃないの?」

それは、私も先程から抱いていた疑問だった。私が触れれる男は、凌太と…レオ。
本当に、どうしてあの時レオの顔が浮かんだんだろ。
今だって、こうして肩に担がれてんのに嫌な気持ちなんて毛ほども無い。

「…嫌じゃない。何でだろうね。昴先輩の時は寒気しかしなくて鳥肌が立ったのに」

人間の感情って不思議。なんて、他人事の様に思ってみる。レオの止まっていた足がまた動き出す。寮の階段を上がって左に曲がるとすぐの部屋。そこが201号室。レオは部屋のドアを開けて玄関で靴を脱ぐと雑に私の靴も脱がし、奥へと進んで雑に私を放り投げた。私の体を柔らかいベットが受け止めてくれた。

「うげっ…なんか色々雑!」

「文句言わないで」

うっ…まぁ、運んでもらった側だし昴先輩から離してくれたし…文句を言う立場ではない気がする。

「…ありがと」

「ん。じゃ俺帰る」

……やっぱり。先生に言ったっていう『付き添う』って言葉は嘘だったのか。