朝食を食べ終えて寮を出ると軽い足取りで職員室へと向かう。水属性の教室がどこなのかを神崎さんに聞くためだ。長い廊下を暫く進んで職員室という札が掲げられたドアを見つけると二回ノックして開いた。

「失礼します。神崎先生はおられますか?」

私の声に少し…いや、かなり細身の教員が反応する。

「おや君は…見ない顔だね。一年生かな?神崎先生は今日は出張で居ないんだ。伝えたいことがあるなら今言いなさい。私が神崎さんに伝えておくから」

今にも折れそうな極細ポッ●ーの様な脚で私に近づきながら喋る。私は脚が折れるところなんて見たくないので早く話を終わらせようとする。

「いえ、急な用事ではないので大丈夫です!失礼しました!」

明らかに教員に対して失礼な態度だったがとりあえずほっと…してる場合じゃない。職員室には用はないと言って出てしまったためしばらく入れないかな…この広い校舎を歩き回って授業が始まる前に水属性の教室を見つけなければいけないのか…なんて事を考えていると突然視界が真っ暗になった。

「だーれだ?」

耳元で囁かれる吐息混じりの音に全身の毛と鳥肌が立つ。その反射で背後にいた男に肘で攻撃してしまった。

「ぐふぉっ」

男の苦しそうな声と共に視界が明るくなる。振り向くとそこにいたのは昨日私が起きた時に隣にいた副会長と呼ばれていた男だった。

「ご、ごめん…秋星くんは、スキンシップは苦手なんだね…」

苦しそうにそう告げる副会長。

「す、すみません!突然だったので…スキンシップはあまり好きではないですし」

「こちらこそ、無礼なことしてしまったからね。謝るよ。それより、もうすぐで授業始まるけど教室に行かないの?」

「あ、実はその教室がどこか分からなくて…」

私はこの歳にもなって迷子であることが恥ずかしく、苦笑してしまう。