対応は激甘でお願いします

 蹴り上げた小石が駐輪場の柱にぶかり、とてもいい音を響かせる。

 私がしまったと思った頃には、佐藤さんがこちらをガン見していた。

 例の疲れ切った様子で。


「あ、あのっ、すみません!声をかけるタイミングが掴めなくてっ」


 慌てて頭を下げると、少しの間を挟んでから「……ああ」と聞こえる。


「三槻静、だったか」
「は、はい!三槻です」


 あまりにも疲れているせいか、目つきの鋭さも落ち着いてた。

 そのおかげであまり委縮せずに済んで、少しほっとする。

 課長さんにまで恐れられる人なんだ。

 きっと普段はこうはいかないに違いない。


「……その、随分とお疲れのご様子ですが、大丈夫ですか?」


 さすがに心配になってそう尋ねると、佐藤さんは座り込んだまま眉をひそめる。


「お前、これが大丈夫に見えるの?」
「見えません、すみません……」


 やっぱり、ちょっと怖い。

 周囲の暗がりも相まって、なおのこと怖い。

 ひとつ溜息をついて立ち上がった佐藤さんは、「ったく」ともう一度呟く。


「課には誰が残ってた?」
「え、えと、大崎さんと伊勢村さんが。あと、多分課長さんも残ってます」
「……いつものか」


 そう言って缶コーヒーをゴミ箱に放り投げる佐藤さん。

 ナイスピッチでゴミ箱に入った。


「…………戻りたくないな」


 そして聞こえた低い声音が、どこまでも切実だった。