対応は激甘でお願いします

「……あの、本当に、もしよければのお話なんですけど」


 対応は激甘を目指すと言った手前、気づいてしまったからにはスルーできない。

 そう思いながら、無言でじいとこちらを見てくる佐藤さんに提案した。


「ぱぱっと食べられそうなお弁当、私が作りましょうか?明日から」
「ぜひとも頼む」
「……はい」


 ほんのり期待のこもった目で見られてしまい、少しプレッシャー。

 というより、なんで私の手作り弁当なんて……どれだけ人の優しさに飢えてるんだ佐藤さん。

 そんなことを考えて、ふと気になることができた。


「佐藤さん、彼女さんとかいらっしゃらないんですか?」
「……今はいない、が」


 そう言った佐藤さんが、少しだけ、珍しく狼狽するように視線を泳がせた。

 ううん?

 どうしたのだろうと首を傾げている間に、軽く咳払いをしてすぐに表情を立て直す佐藤さん。


「それがどうした?」
「いえ、もし彼女さんがいらっしゃるなら、お弁当作りだとか優しくするだとか、お引き受けしない方が良いように思えまして」


 私がもし恋人の立場だったら、他の女の子にそんなことをしてもらうだなんて絶対に嫌だ。

 それに、あまり厄介な関係に巻き込まれたくもない。

 そんな本音は隠しておくことにして、言葉を続ける。


「佐藤さん恰好いいですから、そういう人がいても不思議じゃないなと思ったんですけど。そうなんですね」


 まあ確かに、恋人がいるのにここまで私のような部下へ優しさを求めることはないか。

 そう自分の中で腑に落ちていると、佐藤さんは正面を向きつつ、少しだけ眉をひそめてからおにぎりを頬張った。

 ……うーん、恋人とかそういうお話は割と地雷?

 今後は避けるようにしよう。

 こんなに恰好いいし仕事もできるのに、恋人がいないのはちょっと意外だけれど。

 それはそれで納得できてしまう自分もいた。