我那覇くんの恋と青春物語~水谷百合編~

「・・・分かったわ。だから、頭を上げて頂戴」


董院さんは呆れたように両手を広げ、仕舞ったばかりの鍵を取り出してくれた。


「ありがとう」


「その前に・・・あなたは、ちょっと」


鍵を開けてから、入口とは反対の方向を指差した。

どうやら、何か話があるのだろう。


「卒業式は・・・明日よ」


「えっ」


「あなたがどの女の子と一緒にいようが、私は興味ないわ。だけど、どっちつかずな態度で海を苦しめるのだけは・・・許さないわよ」


高校三年間、董院さんはいつもこうだった。

常に海に気を遣っていて、そして、心配をしている。

こういった親友の形というのもあるのだろう。


「あの・・・」


「はっきりさせない」


力強く言い切ると、入口へのほうへと董院さんは戻る。

入口には、心配そうな表情で水谷さんが立っていた。


「貸し切りで投影しておくから、気が済んだら呼んでね」


水谷さんは微笑み、董院さんは管理人室のようなところへと入っていった。