「本当に好きだね、ここ」


「うん・・・気持ちが凄く落ち着くから」


プラネタリウムの前の公園に入り、家に帰ろうとする子供たちを横目にベンチへと座る。



しばらくの間、沈黙が続く。



彼女はそんなに多く口を開くことはないが、それでもこの時間は好きだ。


「次、いつ来ようか」


「もう次の話?」


彼女は小さく笑い、星が少しずつ輝き始めた空を見上げた。

そして、そのままプラネタリウムへと顔を向ける。


「・・・何度も来たね」


「相変わらず、二人だけだけど」


少し頬が赤くなっているようで、巻いているマフラーを解いて彼女に手渡した。


「寒いでしょ?」


少し戸惑った表情を見せたものの、「ありがとう」と小さく呟き受け取った。


「もうすぐ・・・卒業だね。あなたは・・・まるで北極星のように、私をここまで導いてくれた」


「北極星だなんて・・・」


「ううん、本当のことだから・・・でも、卒業したら、それも見えなくなっちゃうのかな」


「えっ?」


ゆっくりと立ち上がり、もう一度空を見上げる。

明るさと寂しさの狭間のような表情で、何かを考えているようだった。


「さっ、帰ろう」


彼女が前を向き、それを見ながら後ろを歩く。

気がつけば、空は夕空から星空に変わっていた。