「おい・・・あれって、水谷さんじゃないか」


コウが指差した先のファーストフード店、その奥の席に確かに水谷さんが座っていた。


「相手は・・・見慣れない子だね」


学校の女子の情報に関して右に出る者はいないとされる雅でも知らないということは、もしかしたら違う学校の子かもしれない。



違う学校?


「なんか、神妙な顔つきにも見えるけど」


「ここからじゃ、よく分からんだろ」


コウと雅が店内を覗き込んでいるのをよそに、水谷さんがいる方向に背を向ける。



違う学校・・・



その学校というのは、水谷さんが以前通っていた学校ではないだろうか・・・


「水谷さん・・・変わったよな」


一人であれこれと考えていると、後ろから雅が肩を叩いてきた。



あまりにも唐突で、どう答えていいのか分からず、とりあえず雅のほうへと振り返る。

それに合わせるように、雅は店内にいる水谷さんを見た。


「最初の頃は近づくと『私に近づかないで』ていうオーラが全開だったよね・・・相変わらず物静かで向こうから話しかけてくることは滅多にないけど、こちらから話かけたら話してくれるようになったし、本当に変わったよね」


入学して間もない頃は以前の学校の件もあり、人間不信みたいなものに陥っていたのだと思う。

それが徐々に打ち解けていったのだろう。