「私・・・一年・・・留年しているんだ」


あのときの言葉一つ一つが頭の中で甦る。

悲しい表情で、冗談ではなく今にも消えてしまいそうだった。


「一年・・・別の学校に通っていて、ハンドボールやってたの。だけど・・・ある日、仲の良い先輩が部費を盗もうとするところを目撃して・・・先輩からはばれたら部が無くなるから黙っていてって言われたけど、必死で説得してなんとか部費は戻してもらえた・・・」


彼女の涙を流している姿、それが思い出される。

「気にしないで」と簡単には言えない、彼女はそんなことをずっと背負ってきたのだ。


「みんなとハンドボールができれば、それで良かったのに・・・けど、次の日から私とハンドボールをしてくれる人はいなかった・・・私が部費を盗もうとしていたことになっていて・・・それで、学校を辞めて・・・」


うちの高校に入学し直したということだ。

だから、初めて会ったときも、あんな風な態度を取ってしまったのだろう。

これだけ辛い過去があれば、そうなるのも当然だ。


「私・・・何してるんだろうね・・・本当に」


あのとき彼女はどんな想いで、このことを話してくれたのか。

それはこちらが思っていることでは表せない、そんな想いだったのではないか。