「・・・綺麗」


頭上に広がる満天の星空を眺めながら、隣に座る水谷百合(みずたにゆり)が声を洩らす。

彼女に目を移すと、目を輝かせ、口の前で両手を合わせていた。

普段は物静かな彼女にとって、学校ではここまではっきりと感情を顔には出さない。

その表情を見て、思わずこちらも嬉しくなる。



学校から歩いて十分ほどのところに、このプラネタリウムがある。

噂では個人が経営していて、随分と古くからあるようで外観は綺麗とは言い難い。

こちらとしてはそれがかえって都合が良く、学校帰りに行くと大抵二人きりだった。

いつも同じ場所に座り、同じように星空を眺めてきた。


「・・・はあ」


大きく溜息を洩らす。



こうなると、二人の間に会話などいらなかった。



二人して星空を眺める・・・



ただ、それだけでよかった。