「私はカノン。あなたの名前は?」


その子はキョトンとした顔をした。


「…あたいはシャーリン。みんなはシャーリって呼ぶけど。」


「そうシャーリっていうのね。いくつかしら?」


「年のこと?あたいの年なんて聞いてどーするのさ?それより金くれよ!!」


会話もそこそこにシャーリは怒り出してしまった。


仕方なく私はスカートのポケットから一枚の硬貨を取り出した。


「ねぇ、もしよかったら今度の土曜日に街はずれの教会にっ!きゃっ!!」


私の手から硬貨をひったくるように奪って、シャーリは走って行ってしまった。


「…イタっ。」


見ると手に引っかき傷が付いていた。


それくらい、あの子たちは困窮しているんだ。


土曜にうちの教会で開いている、読み書きを教える教室に誘いたかったんだけど…。


私はジンジンと痛む手を撫でると、帰路に着いた。