月明かりの道標


でもそのあと、気づかされました。
そうだわたしはあの頃。
名前を教えていなかったのです。
“ひゆちゃん”と呼ばれていたような気がする。
名前を教えなかった理由は、お父様にきつく言われていたのです。
速水さんは、席に着いてすぐに伏せてしまいました。
やはり、わたしのことを覚えていないようで。
そういえば、わたし。
黒縁メガネに、茶色いセミロングの髪を三つ編みにしていました。