「転校生を紹介する。…入ってきなさい」
わたしのクラスの担当は、男の先生で確か若いし、女子生徒からモテモテとかなんとか…って友美さんが言っていたような気がします。
わたしの座る席は、窓側の1番後ろの席で、隣の席は空欄で多分ここに座るのでしょう。
ガラガラガラ
開いたドアから入ってきたのは。
紛れもなく成長した、“奏多”くんで。
女子生徒生徒の悲鳴ともいえる、黄色い歓声。
「…速水 奏多【はやみ かなた】。…よろしく」
ぶっきらぼうに言った声は、少しだけあの頃を思い出させた。
「じゃあ、あの席に座って」
指差した先にはわたしの横の席で。
彼はわたしのことを見たけど、何も言わなかった。
その瞬間、わたしは絶望した。

