普通なお嬢様の極秘恋愛

「いえ、このままで。

僕はもう、このお屋敷で働く者ではないので、こちらのスーツに袖を通しはしませんよ。

大丈夫ですから」

「……そう?
じゃあ皆さん、そのままリビングへ。

お嬢様、お気を強く持たれるのですよ?」

ぐっと拳を握って、ガッツポーズをとる田中さんに苦笑する。
わたしよりも田中さんが戦闘態勢って感じだ。

わたし達がリビングの扉を開けると、お父様が指定席に座っていた。
一番奥の上座。
険しい顔で、じっとこちらを見据えている。

お父様がいるだけで、空気がピリピリする。

緊張感満載の空間に逃げ出したい気分になりながらも、わたしもいつもの自分の席に腰掛ける。
安達君は部屋の脇に、お手伝いさんらしく佇んだ。