「あ、えっと……」

声にハッとした。

わたし、いつまでこの2人に迷惑を……!
瀬田さんはずっと付き添ってくれていたらしいし、お兄さんに至っては未だにわたしを抱きとめている。
しかも、申し訳なさそうに控えめに。

その上、ショックすぎて忘れていた頬を叩かれたことを思い出した。

……思い出してしまうとヒリヒリと痛む。
でも、心の痛みほどではない。

「ご、ごめんなさい……!」

慌ててぱっと体を離した。

好きでもない女子を、仕方のない事態だとしてもずっと抱きとめていないといけないなんて、大変だったろう。

もし万が一、好きな女子に見られでもしたら勘違いされかねないし、迷惑でしかない。

「あ、いや、気にしないで?
俺は大丈夫だから。

それより部屋へ。
さっきより腫れてる」

自分の頬を指差しながらお兄さんが言い、瀬田さんは携帯を取り出して、誰かと電話をしだした。