翔護が行っちゃう……!
ここで別れたら、もう会えないかも知れない……!

「翔護、翔護……!」

フラフラ立ち上がり歩き出すも、バランスを崩した。

「危ないって!」

慌てたお兄さんに抱きとめられた。
その隣からは、瀬田さんが心底心配そうにわたしの顔を覗いている。

「ああ、凛。
中堂が車を旅館の正面に回している。
それに乗って帰れ。

わたしは森下を連れて、別の車、ルートで戻る」

ちらりと振り向いたお父様が、それだけ言って再度歩き出した。

翔護が勝ち取ってくれたらしい、わたしの自由の中に、翔護がいてはいけないの……?
どうしてお父様はここまでかたくなで、どうして翔護は自らを犠牲にしたの?

お父様と翔護は一度も振り返ることなく、角を曲がって見えなくなってしまった。