「……はい……。
これで凛が自由になるのなら……」

翔護はわたしをふわりと優しく抱きしめたあと、しがみつくわたしをやんわり剥がした。
手を取って立たせてくれたけど、放心状態のわたしは再度ふらふらと崩れ落ちて床にお尻をついていた。

「……凛、今までありがとう。
大好きだった。
俺じゃなくても、凛には良い人が現れるよ。
だから、自由を楽しんで」

寂し気な笑顔を残して、翔護はお父様に着いて歩き出した。

座り込んだわたしを、もう翔護は立ち上がらせてはくれなかった。
振り向かずに行ってしまった。

「森下、さっさとここの荷物をまとめろ。
それから一旦屋敷へ戻る。
屋敷にあるお前の荷物も片付けろ」

「はい、旦那様……」

そんな会話を遠くに聞きながら、涙が頬を伝う。