「お客様だと?!

私がこんな陳腐な旅館に泊まるとでも?
お前達、わたしを知らないのか?

この、世界的デザイナーの私を?!」

これだから田舎者は、と、鼻を鳴らしている。
あのブランドで固めた姿、人を見下した威圧的な態度。

久しぶりに見る、お父様だった。

なんで、なんでお父様が……!!

「凛、いるんだろう?!」

名前を呼ばれ、肩がぴくりと震える。
座り込んだまま、動けない……。

怖い……。

「家出とはまた馬鹿なことをしてくれたもんだな!
メディアにでも知れたらどうするつもりだ!
わたしのメンツを潰すつもりか?!

わたし自らが迎えに来てやったんだ、早く出てきなさい!!

全く手間をかけさせて。
お前にはお嬢様としての自覚が足りなすぎる!!」