そっと襖を開けて、様子を伺う。
話し声は近い。

「どこのどなたかは存じませんが!
そのような子はここにはおりませんっ!

勝手に上がり込んで好き勝手なことをおっしゃって……!

お客様、失礼ですよ?!」

あの優しい瀬田さんが、声を上げている。
よっぽどのことが起きているに違いない。

「この人の言うとおりです!
何なんですか?!」

今朝出会ったばかりのお兄さんも、瀬田さんと一緒に声を上げている。
足音も声も、ますます近づいてきた。
わたしは小さく麩を開けて、廊下の様子を伺った。

……!!
あ、あの姿……!!

わたしは慌てて、けれど気づかれないように静かに襖を閉じて、へなへなと座り込んだ。