「中堂さん、ここで」

わたしの声に、中堂さんは車を止めた。
ここは高校まで一歩手前の路地裏。
あと5分も歩けば学校だ。

「ですがお嬢様……」

「校門前まで送ってもらうと目立っちゃうから……。
中堂さん、毎朝ここまでで、お願いしますね」

中学の頃。
突然お嬢様生活を強いられたわたしは、電車通学から車通学への変化を余儀なくされた。
勿論、お父様の命令で。

今まで歩いて登校していたわたしが、突然黒塗りの車で校門前。
運転手にドアを開けてもらって降りるようになったのを見た生徒達は、ヒソヒソと陰口を叩いた。