おばぁちゃんに急かされながら、わたしも翔護も慌てて着替えを済ませて荷物をまとめた。

元々そんなに荷物はないし、支度はすぐにすんだ。

「不憫よの、夏休みも自由に過ごせず、母親も信じられないなんて……。

ごめんよ、凛ちゃん。わしの娘が凛ちゃんを苦しめておる……」

「お。おばぁちゃん……」

おばぁちゃんは悪くない。
むしろ良くしてくれたのに、辛そうな顔で謝らないで欲しい。

わたしはおばぁちゃんにありがとう、と笑顔を向けた。

ほかにも……。
ゆりちゃんや瀬田さん、それに最初に会った女性にも、仕事を教えてくれた全ての人にお礼を言いたかったけれど。

そんな時間はない。
今度改めてお礼を伝えに来よう。

「ほら、行きな。
凛ちゃんと翔ちゃんと一緒にいれた時間、楽しかった。

わしが良い旅館を紹介してやるから、そこへ行きな」